
衆法 第217回国会 16 半島振興法の一部を改正する法律案
第217回国会にて議論される「半島振興法の一部を改正する法律案」について
浜田聡参議院議員のご依頼にて調べました。衆議院では賛成多数で可決。参議院にバトンタッチされ議論されます。おそらく可決されるだろうこの法律案。調査をしていくうちに税金の使途の不明瞭さが浮き彫りになっていきました。長文となりますが最後まで読んでいただけると嬉しいです。

半島振興法(正式名称:半島振興対策実施地域の指定のための特別措置に関する法律)は、1985年(昭和58年)に制定された日本の特定の半島地域を活性化させるための法律です。
半島は山や海に囲まれているため、交通が不便だったり、仕事が少なかったりすることが問題になっています。そこで国が補助金や給付金等の税金を投入し、特定の半島地域で生活する国民が暮らしやすく、働きやすい地域へと姿を変え、産業を発展させることを目的に制定されました。
例えば、
- 道路や橋などのインフラ整備の補助金
- 漁業や観光業を活性化し、仕事を増やすための地域産業支援の補助金
- 医療や教育の環境を良くするための支援給付金
といった半島地域が住みやすく働きやすい地域になるように、補助金や給付金などの税金を投入しています。
半島振興対策実施地域

半島振興対策実施地域は、全国で23地域、194市町村が指定されています。これらのうち、過疎地域に指定されている市町村数は139市町村存在します。したがって、半島振興対策実施地域の市町村のうち、過疎地域と重複して指定されている市町村の割合は約71.6%となります。つまり半島振興法で指定されている市町村のほとんどが過疎地域であると言えます。
時代背景
1950年代後半から1970年代初頭にかけて、日本では高度経済成長と呼ばれる戦後の経済成長によって、都市部の工業化が進みました。一方、地方では過疎化が進み、特に地理的に不利な半島地域は経済発展が遅れてしまいました。そこで地域格差の是正や地域振興政策を強化しようと国は法整備を進めてきました。
1962年には工業地域の整備を進めるために新産業都市整備促進法を制定し、1970年には人口減少地域への税金投入による国の支援を強化するために、過疎地域対策緊急措置法を制定。このような流れの中で、半島地域に対しても支援が必要とされるようになり、1985年に半島振興法が制定されました。
この法律は10年間の時限立法として制定されましたが、3度の延長がなされています。延長された理由は、半島地域の経済や生活環境の改善が不十分であるとされたためです。前回の改正は2015年でありましたが、この度も半島地域への継続的な支援が必要と国がみなし、4度目の改正案が提示されています。
過去の改正内容
以下の改正によって、半島地域の自立的発展や半島地域住民の生活向上を目標とする施策が進められてきました。
- 2005年(平成17年)3月30日改正:10年間の時限立法を10年間に延長し、地域間交流や産業振興に関する施策を強化
- 2015年(平成27年)3月31日改正:さらに期限を10年に延長。半島振興計画の内容を拡充し、産業促進計画や地域公共交通の活性化、就業の促進等に関する規定を整備。
今回の改正案について
国土交通省 国土審議会 第13回半島振興対策部会(2024年5月17日)の議事録を見ていきましょう。
参考 国土交通省HP 国土審議会:半島振興対策部会 – 国土交通省
2025年3月14日に3度目の改正案が衆議院に提出され、3月18日に可決され、参議院で審議されます。
衆議院審議時賛成会派:自由民主党・無所属の会、立憲民主党・無所属、日本維新の会、国民民主党・無所属クラブ、公明党、日本共産党、有志の会、参政党、 日本保守党
衆議院審議時反対会派:れいわ新選組
今回の改正案では、3月18日の衆議院本会議にて自民党の井上貴博国土交通委員長から説明がなされました。以下は文字起こしとなります。
本案は、昨今における半島地域の社会経済情勢に鑑み、引き続き半島地域の振興を図るため所要の改正を行うものであります。 その主な内容は、第一に目的地点において半島防災及び地方創生等を追加すること、第二に地方創生、地域の特性を生かした魅力の増進及び半島防災に関わる半島振興の基本理念を定めること、 第三に国が半島振興基本方針を定めることとするとともに、都道府県の半島振興計画についても作成の努力義務化及び記載事項の充実を図ること、 第四に半島振興対策実施地域に関わる関与規定の拡充を図ること、第五に法律の有効期限を令和十七年三月三十一日まで十年間延長することなどであります。 本案は、去る十四日の国土交通委員会において、内閣の意見を聴取した後、賛成多数をもって委員会提出法律案として提出することに決したものであります。 何とぞ速やかに御賛同いただきますようお願い申し上げます。
まとめてみると、今回の改正案の目的はこのようになります。
1. 半島防災の強化
(1) 防災インフラの整備
• 津波や高潮対策として防潮堤や堤防の強化
• 災害時の避難ルート確保のための道路・橋梁の耐震化
• 災害時に孤立しないように通信インフラの強化(Wi-Fi、防災無線)
(2) 防災計画の策定・支援
• 半島地域特有のリスク(地震、台風、土砂災害)に対応した防災計画の策定
• 地域住民の防災意識向上のための避難訓練や教育プログラムの強化
• 国や都道府県が、半島地域に適した災害対応マニュアルの作成・支援
2. 地域振興の強化
(1) 観光・産業の活性化
• 半島ならではの観光資源(海岸、温泉、特産品)を活用した観光振興
• 地域ブランド化による特産品のPR強化(漁業・農産物など)
• 都市部からの移住者支援や、ワーケーション(仕事+観光)の推進
(2) インフラ・交通の充実
• 都市部とのアクセスを改善するための道路・鉄道・港湾の整備
• 生活利便性を向上させるためのバスや船の運行支援
(3) 地域の人材確保と活性化
• 若者の流出を防ぐための雇用創出(リモートワーク支援、企業誘致)
• 地域の高齢化対策としての医療・介護サービスの充実
3. 法律の枠組みとしての強化
• 国が主導て都道府県の振興策を統一的に進めるために「半島振興基本方針」を策定
• 計画の実効性を向上させるために都道府県に「半島振興計画」の作成を義務化
4.支援の拡充を図る
• 税制優遇・補助金・規制緩和などを活用し、企業や住民が活発に活動できる環境を整備するといった支援措置の拡充
5.10年の時限立法の延長
・法律の有効期限を令和17年3月31日まで十年間延長する
この改正案は防災強化(インフラ整備・避難対策)と地域振興(観光、産業支援、インフラ整備)を一体的に推進する体制を整えることに焦点が充てられています。特に、地方創生と半島防災が一緒に進められる点が重要で、半島地域の「住みやすさ・安全性・経済活性化」を総合的に強化する方向性です。具体的な施策については、国や自治体の今後の計画次第とはなりますが、大きな枠組みとしては防災強化と地域振興が目的となると想定されます。
衆議院本会議においては触れていませんでしたが、本案施行に要する経費としては平年度約7億円の見込みとのことです。つまり「毎年度大体7億円を使うよ」というアバウトな予算のつけ方になります。
半島地域振興等に使われる税金
「JUDGIT!」によると、半島地域振興に関する予算は2012年以降、年ごとに異なりますが、2015年の改正法成立後の予算は約3億1500万円、直近年度の2019年は約8700万円となっています。
補助金の対象には、地域間交流、産業振興、定住促進のための事業が含まれ、道府県・市町村への補助率は最大1/2、民間団体には1/3とされています。


半島振興事業の概要と予算配分
半島振興事業は、地域の活性化や定住促進を目的とした施策であり、国や自治体がさまざまなプロジェクトに資金を投入しています。主に、半島地域の広域連携促進、産業振興、観光開発、移住定住の促進、地域ブランドの確立などを支援する事業が実施されています。
主要な支出先と支出目的
2014年から2018年にかけて、多くの自治体や民間企業、研究機関に対して補助金が交付されました。具体的には、以下のようなプロジェクトに使われています。
- 調査研究事業:
半島地域の現状分析や振興計画策定のため、シンクタンクやコンサルティング企業に委託調査を実施。たとえば、「半島振興対策地域現況分析調査業務」や「半島地域活性化基盤形成に関する調査業務」などが該当。 - 広域連携促進事業:
複数の自治体が連携し、観光振興や移住促進などの地域活性化を図る事業。たとえば、和歌山県、長崎県、高知県、千葉県などで「半島振興広域連携促進調査事業」を実施。 - 地域ブランド確立事業:
丹後半島や国東半島などでは、地域の観光資源や特産品を活用し、ブランド価値を高める事業が推進。具体的には、「丹後ブランドの確立による滞在交流型観光地域づくり事業」や「国東半島地域広域連携促進事業」など。 - 観光・交流促進イベント:
「ビッグひな祭り」や「佐田岬マラソン」などのイベントを開催。地域の認知度向上と観光客誘致を目指した事業もある。
予算額と主な支出
年度ごとの予算額は以下の通りです。
年度 | 予算額 | 主要事業例 |
---|---|---|
2014 | 約3500万円 | 半島地域振興のための調査事業 |
2015 | 約2億円 | 各都道府県の半島振興広域連携調査 |
2016 | 約1億円 | 国東半島や南房総地域の振興事業 |
2017 | 約8700万円 | 熊野古道活用促進事業など |
2018 | 約9000万円 | 薩摩・大隅半島産業振興事業など |
参考:半島地域振興等に必要な経費 – JUDGIT!(ジャジット)
2021年以降の情報を探してみると「行政事業レビュー見える化サイト」にありました!


気になる点
1.住民は豊かになっているのか
事業の多くが調査研究や計画策定に使われており、具体的な経済効果や雇用創出の実績が不透明。企業やNPOなどが受託する形で進められるケースが多いように見受けられます。地域住民への直接的な利益がどれほどあるか見えないため検証が必要ではないでしょうか。継続的な税金投入に頼る形態ではなく、長期的に自立可能な地域産業モデルを確立していくための社会改革が必要です。
2. 低い執行率、不透明な使途
2021年度の執行率は29.5%と驚くほど低く、予算の大部分が使途が不明となっています。2022年度は57.8%、2023年度は61.1%と執行率が改善されているように見受けられますが、いずれの年も全額が適切に活用されているかどうかは不明です。
3.なぜ補正予算が大幅に増加?
2021年度の当初予算は8400万円。しかしその後の補正予算によって1億2300万円が追加され、最終的に2億700万円となりました。ところが実際の執行額は6100万円にとどまっており、約70%の予算が未使用のままとなっています。本来、補正予算は必要性に応じて適正に編成されるべきもののはずですが実際には使われる見込みがないにもかかわらず計上されている可能性が否めません。
4.繰り返される翌年度への多大な繰越額
2022年度には前年度からの繰越額が1億3900万円となり2023年度も同額の繰越額となっています。このように多額の未執行予算が毎年繰り越されていることは、計画通りに予算を執行できていないのではないかと疑ってしまいます。
半島振興法と事務事業評価
税金の使途を確認するためのツールとして事務事業評価があります。
事務事業評価とは
事務事業評価とは、地方自治体や行政機関が実施する各種事務事業について、その必要性や効果、コストパフォーマンスを評価する仕組みであり、行政の効率性や透明性を向上させることを目的とし税金の流れを把握することができます。
半島振興法に該当する地域は事務事業評価を公開しているのか
半島振興法の適応23地域の194市町村に広域連携促進、産業振興、観光開発、移住定住の促進、地域ブランドの確立などを支援する事業を焦点とした事務事業評価が該当する自治体にネット上で公開されているのか探してみましたが、残念ながら見当たりませんでした。
半島振興法に基づく地域振興事業においても、各自治体が事務事業評価を行い、実施状況や効果を検証することが必要だと考えます。きちんと事務事業評価を公開することによって、補助金の適正な活用や地域に実状に見合った施策の見直しが促進されるのではないでしょうか。
半島振興法の延長は本当に必要なのか?
10年ごとの延長が繰り返されるが、効果は出ているのか?
- 半島振興法は1985年の制定以来、10年ごとに延長が繰り返されているが、半島地域の人口減少や産業衰退は依然として進行している。
- 道路整備や補助金制度が継続されているにもかかわらず、地域経済の自立にはつながっていないのではないか?
- これまでにどれほどの税金が投入され、その結果として何が得られたのか、具体的な成果を明示すべきではないか。
税制優遇や補助金が産業振興に貢献しているのか疑問
- 企業誘致や地域振興を目的とした税制優遇が継続されているが、実際にどれほどの新規雇用が創出され、どれだけ地域経済に還元されているのか?
- 税制優遇に依存した企業が、恩恵を受けた後に撤退してしまうケースもあるのではないか?
- 補助金制度についても、実際に地域住民の生活向上に寄与しているのか、それとも自治体や一部の事業者の利益のために使われているのか、事務業評価を公開していない市町村がほとんどのため不透明な部分が多い。
「専門家の導入」=新たな税金の無駄遣いではないか?
- 「ミッションドリブン」「シチズンズドリブン」などの名目で専門家を導入し、地域活性化を図るというが、実際にどれほどの効果が期待できるのか?
- 外部からの専門家を導入し続けることが、果たして地域の自立につながるのか? それとも単に税金で雇われた専門家の仕事を作るための制度になっているのではないか?
- これまでの専門家による支援が、具体的にどのような成功事例を生み出し、どのように地域経済の自立を促したのか、その成果を明確に示すべきではないか?
4. 物流コストの問題を理由に税負担化を続けることは妥当か?
- 半島地域では輸送コストが高く、利益率が低いため、所得が全国平均よりも低いというが、これは半島に限った話ではない。
- 物流コストの高さを理由に、半永久的に税制優遇や補助金を続けることが本当に正当化されるのか?
- 産業構造の転換や新たなビジネスモデルの導入による解決策を真剣に検討せず、税金で穴埋めを続けることが、地域の自立を阻害しているのではないか?
5. そろそろ「本当に必要な支援」と「延命措置」を切り分けるべきでは?
- これまで数十年にわたり税金を投入し続けたにもかかわらず、状況が改善されていないのであれば、今の制度は機能していないと判断すべきではないか。
- 本当に必要な支援は何なのか、効果がない施策を続けることが単なる延命措置になっていないか、国民に対する説明責任を果たすべきではないか?
- 10年ごとの延長を「当たり前」とせず、徹底的な精査と成果の検証を行った上で、今後の方針を決定すべきではないか。
浜田聡議員に国会で質問していただきたいこと
- 半島振興法は1985年以降、10年ごとの時限立法として延長され続けていますが、その間に半島地域の交通インフラ整備はどの程度、数値的に改善されたのでしょうか?私は、1985年~2024年の間に半島地域全体の交通インフラの改善度合いを定量的に評価するデータを探しましたが、具体的な数値データが見つかりませんでした。政府として、道路整備率や公共交通の利用者数など、定量的な指標を用いて効果を明確に説明できますか?また、改善が進んだとしながらも『どのように改善したのか』が不透明なまま、10年間の時限立法を延長し続けているのは問題ではないでしょうか。半島振興法が『補助金ありき』の制度になっているのではなく、本来の目的である地域振興のために、徹底した効果検証を行い、効果の薄い施策を廃止し、順調に進んでいる施策については民間に移行するなどの新たな戦略を導入する必要があるのではないでしょうか?
- 税制優遇や補助金による半島地域の支援は半島地域の住民だけでなく、全国の納税者全体の負担によって支えられています。補助金を通じた税負担化の継続は、結果として増税につながり、国全体の経済成長を阻害するのではないでしょうか?むしろ、消費税減税などを行い、国民全体の可処分所得を増やすことで、半島地域への旅行や特産物購入などの人の動きを促す枠組みを国が積極的に創出し経済の活性化を図るべきではないでしょうか?物流や産業コストの削減は、補助金依存ではなく、技術革新や規制緩和、民間主導の投資促進によって解決すべきです。1985年⇒2035年、つまり50年間継続することとなります。今後もこの制度を漫然と延長するのではなく、2035年には確実に終了し、半島地域が補助金なしでも持続可能な形で発展できるよう、抜本的な見直しを行うべきではないでしょうか?
参考資料
- 衆法 第217回国会 16 半島振興法の一部を改正する法律案
- 参議院提出法律案(半島振興法の一部を改正する法律案)
- 半島振興法|条文|法令リード
- 地方振興:半島振興対策の推進 – 国土交通省
- 地方振興:半島振興広域連携促進事業 – 国土交通省
- 国土審議会:半島振興対策部会 – 国土交通省
- 衆議院インターネット審議中継
- 半島地域振興等に必要な経費 – JUDGIT!(ジャジット)
- 行政事業レビュー見える化サイト RSシステム
- 「行政評価」の時代 上山信一著
さいごまで読んでいただきありがとうございました☆全ての増税に反対!!
